Harry Gruyaert at Institut français du Japon Tokyo / by yota yoshida

鎌倉に行った話を書こう書こうと思っていたらもうこんなに日が過ぎてしまった、おっさん老いやすくなんちゃら。期待していた人がもし居たのなら申し訳ない。考えれば考えるほどに書く事がまとまらないので、多分書かれることは無いと思う。けれど、とても貴重で刺激的な体験だった、ということだけとりあえず記しておく。

そんな訳で、先日マグナムフォトグラファーのHarry Gruyaertのトークを聞きに、旧東京日仏学院ことアンスティチュフランセ東京に行ってきたわけだ。最初、アンスティチュフランセって何だよって思ったけど日仏学院から名前変わってたのね。全然行って無かったから知らんかったわ。最後に行ったのはストローブ=ユイレとかやってた頃だから13-4年ぶりかな。しかしほとんど何も変わってなくて逆に驚いた。まあ良いとして、日仏トークと言えば微妙な感じの同時通訳。案の定今回もそれ。一応録音もしたんだけどハリーはフランス語だから後から聞き直しても全然わからんかった。いやどうせわからんだろうとは思ってたけれどさ。

印象としてはちょっと気難しい感じのおじさん、年齢的にはおじいさんか。のっけから「パーは俺がマグナムに入ることを快く思っていなかった」「パーよりも、エグルストンよりも先にカラーで撮っていた」みたいな事を言っていて、やや不安になる。対談相手のタカザワさんがその流れから「パーに影響されたことはありますか?」って質問したときには、おお、そこに良く突っ込んだな...という感じではあったけど。まぁ、当然答えは否だったんだけど。彼はもともとは映画を撮りたかったけれど、お金を集めることがヘタだったので長く続かなかった、それから故郷であるベルギーを出てフランスに行き、生計を立てるためにファッション写真を撮った。そしてこの時期にいろんな人に会った、ブレッソンやクラインなどなど。彼らに会ったことで写真家に必要なことは知識や技術ではなく個性だと思った、だから誰かの弟子になるようなことはしなかった。この頃ロベール・デルピールにも出会っている。デルピールはポッシュなんか作ってる有名なエディターだけど詳しくはググってね。だからハリーは写真家としての重要な要素の一つに、良いエディターに出会うことを挙げている。それは必須の条件であると。また、ハリーは雑誌の写真依頼については否定的で「罠だと思う」とまで言っていた、雑誌だと自分の個性を発揮することが出来ないので、どちらかというと企業広告だったり企業イメージの写真を撮るほうが良い、とのことだった。その後自分の国に帰ったときに、最初はモノクロで撮ってたがそれは「色づいて見えなかったからだ」と言っていたが、正直あんまりよく分からなかった、というかその手の話は胡散臭いので話半分に聞いていた、という感じか。彼にとって、目に見える色と感じる色彩との間には何か違いがあるんだろう。しかし撮っていると徐々に色を感じるようになり、故郷をモノクロではなくカラーで撮るようになったそうだ。その後はアサインメントで各国を回ったが、良いと思った国は自分でまた旅で出向いたりした。モロッコ、エジプト、インド、ソ連。写真を撮るには驚きがないと撮ることができないが、旅には驚きがある。だから常に旅をしている。写真を撮るときに家族や友人のことを考えていては撮れない、など。あんまりウンウンと頷くような内容ではなかったかな、いまの自分の考えとはあまり一致するところはなかった。別に自分と同じ考えを聞きに行ったわけではないけれど。あと今は完全にデジタルに移行しているそうだが、デジタルで大変なのはたくさん撮ることが出来るので、その分のエディティンングに時間がかかって大変、だそうだ。フィルムの時はなかなか重装備で、アシスタントも必ず連れて歩いていたがそういうのはなくなった、と言っていたのは印象的だった。全体的に話自体はそんなに面白いという感じではなかったけど、途中で流れた映像が良かった。ハリーが編集してどっかの大学かなんかで流したとか言ってた気がするが、基本は彼の喋る言葉に彼のああいう写真がスライド形式で流れるものだったけど、最後に彼が彼の娘たちを撮った写真が流れた。これがとても良かった。彼は「あんまり見せたくなかった」とは言ってたけれど、作品と自分を分けて考え、世が求めるハリーの写真作品を撮り続ける彼が、そうじゃなく、家族だけに向けた視線がちょっと見えた気がした。それは自分と写真の間に線の引かれていない、そういう写真だった。もやもやしながら話を聞いていたけれど、その写真を見たら何だかどうでも良くなったしまった。後は国ごとの色やレイヤーの違いとか、そういう事を話していた気がするけれど、あんまり耳に入ってこなかった。

トーク後、一枚だけ写真を撮らせてもらった。ちょっと緊張していたのか、カメラの設定をちゃんと確認しないまま撮ったので、それはブレッブレで何が写っているかよくわからない、何ともひどい写真だった。だけど撮ったこと自体に満足してしまって、サンキューも言えずに笑顔で会釈して帰った。それは誰かに見せる写真じゃなくて、自分のための写真、という事にしておこう。